赤岳西壁北峰リッジ(赤岳主稜)
 (南八ヶ岳・2013年2月17日(日)・前夜発日帰り)
 冬期登攀初級(2級下・W-)
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2.北峰リッジ(赤岳主稜)登攀〜つづき
(4)上部岩稜の登攀
●「上部岩稜」は、「取付ルンゼ」のツメのテラスから、全てスタカットで登ると4P・合計(115m+α(緩い雪面))程の岩稜である。最初のピッチ最上部にあるチムニー(以下「上のチムニー」と呼ぶ)がコンディション次第でちょっと問題だが、その上は基本的に階段状の岩場登り(2P・80m)と、緩い雪面歩き。
●6P目/9P(35m)は、出だしの段差のある岩場を登って一旦リッジに上がり中間支点を取った後、右横の階段状ルンゼを登る。出口の「上のチムニー」が上部岩稜の核心部(V+)で、これを抜けリッジ上に戻ったところに終了点がある。
●7P目/9Pは緩い岩稜歩き、8P目/9Pは凹角(V)を登って階段状の岩稜へ。その上の緩い雪面を登って一般道にでたところが終了点だが(9P目/9P)、頂上小屋の建つ北峰まで僅かな距離なので、そのまま登り北峰頂上でロープを解くのが一般的。
●なお、(7P〜9P)/9Pは大半が容易な岩稜歩きのためコンテで登ることが多いようだ。
 
 6P目/9Pの「上のチムニー」
 「上のチムニー」を抜けたところ
中岳・阿弥陀岳の展望もよく北峰リッジで一番のビューポイント
 上部岩稜は、6P目/9Pのみスタカット、以後の3P相当は予定通りコンテで登った。意外に雪が少なく、残雪期は浮石が多いと感じたが今回はコンクリートされておりホールドに安心感があった。

「上のチムニー」は雪が着いていたものの、雪を掃って落ち着いて探せば必ずガバがあるし(残雪期は動きそうなものも安定したホールドとなっていた)、氷結していた凹角(8P目相当/9P)も今回は岩が乾いており、上部岩稜全体を通じ前回よりむしろ容易に感じた。

 文三郎尾根上の「下降点」で前回比1時間15分遅れが、6P目/9P終了時点では6分遅れまで追いついていた。ただ、それは待ち時間がなかったためであり、この段階では登攀時間自体は残雪期より若干長かった。
「上のチムニー」を抜けた後、稜線が近くなったこともあり少し風が出てきた。
 8P目/9P相当は凹角を登る  最終ピッチ
 
3.登頂・下山
 もう誰もいなくなった北峰に登頂。最後の3Pをコンテで登ったことが奏功し前回より50分ほど早い到着だった(15時半過ぎ)。「下降点」をスタートしてからほとんど何も口にしていなかったせいか急に空腹を感じる。風が凌げるところへ移動し行動食で補給、妻もようやく元気を取り戻した。
 
 展望のよい南峰へ移動。途中ごく短い距離だが少し痩せた雪稜の通過があった。
天気はやはり下り坂で雲が多かった。それでも、南西方には権現岳が大きく、その背後に北岳・仙丈ヶ岳・甲斐駒ヶ岳〜鋸岳といった南アルプス北部の山が望めた。また、西方の阿弥陀岳は、すぐ左側背後に昨夏登った入笠山(スキー場が目印)とその奥に中央アルプス、右側背後には北アルプスを従えてご本尊のように見えた。
 
 赤岳より権現岳方面の展望(背後は南アルプス北部の山々(2008年2月中旬))
画像にカーソルを合わせると山名が表示されます
 南峰から急な岩場を下る。フィックスと半ば雪に埋もれた鉄階段のステップが冬期は有難い。中岳との分岐を過ぎ文三郎道を下る。途中「下降点」で写真休憩、夕照の北峰リッジが輝いて見えた
 行者小屋には17時に戻る。まだ4〜5張のテントがあった。荷物の整理と補給を済ませ、下山にかかる。途中からヘッデン歩行となったが、八ツのバリエーション日帰りでは毎度のこと。これまたいつものように、下りは私の方がバテて何度か休ませてもらった。

 赤岳山荘(美濃戸)で反対側のベンチに腰を下ろすと、暗闇に光る2つの目と鉢合わせ。目が慣れてくるとずんぐりした黒っぽい姿が見える。「クマか?」と思ったら、カモシカだった。一昨年の春、やはり赤岳主稜に行った時も(その時は往路で朝だったが)、同じ場所で(赤岳山荘の軒先)カモシカを見かけているが、同一個体のような気がした。赤岳山荘で飼っているわけでもないだろうが、看板娘?

 美濃戸〜美濃戸口は林道間をショートカットする登山道を歩いた。この道は15年程前やはりヘッデンで下りていて妻が捻挫し、以後ずっと歩いていなかった。久しぶりに下ってみるとやはり少し時間短縮できるようである。もっとも疲れのせいかそれでも往路より少し時間がかかった。
 
 今回の山行は、何よりも気象条件に恵まれたこと(ほとんど無風)、また、幸運にも順番待ちがなかったことに尽きる。いずれの要件を欠いてもうまくいかなかったと思う。スタカット部分の登攀時間は前回とほとんど変わっておらず、まだまだ改善すべき点が多い。となると、昼近くからのアタックは、1日で2本(阿弥陀北稜+赤岳主稜など)登れるようなパーティーならいざ知らず、現状の私たちの実力ではリスキーで、やはり、ちょっと無謀な挑戦だったかもしれない。
【日程・メンバー】2013年2月17日(前夜発日帰り)・夫婦二人
【行程
登山口までのアクセス方法:車

==は車,--は徒歩

2/16(土)夜〜17(日)
自宅(横浜)2/16(土)18:15=(第三京浜・環八・首都高(調布IC19:42)・中央道(八王子IC〜八ヶ岳PA21:08〜2/17(日) 04:30(車中泊))=小淵沢IC 04:35=美濃戸口5:05/5:48--美濃戸--行者小屋--文三郎道中間部〜赤岳沢右ルンゼトラバース〜赤岳西壁北峰リッジ--行者小屋--美濃戸--美濃戸口19:43/20:11=(中央道(小淵沢〜八王子)・R16・R246)=自宅(横浜)23:30
【山行データ】
2/17(日)曇りのち晴れ

○行動時間13時間55分(@ABの合計、前回比△1時間35分)
@アプローチ:6時間24分(前回(2011.4.17)より+24分)
[内訳]美濃戸口--3時間17分-->行者小屋(休憩・準備1時間5分)--1時間20分-->赤岳沢右ルンゼへの下降点(休憩・準備20分)--トラバース60m(コンテ)・22分-->北峰リッジ取付
A北峰リッジ登攀(チムニー取付〜赤岳北峰):3時間29分(前回比△1時間58分)
(参考)標準コースタイム2時間半〜4時間
[内訳]北峰リッジ取付--2時間18分(スタカット3P+コンテ(3〜4P目相当))-->上部岩稜取付--1時間11分(スタカット1P+コンテ(6〜9P目相当))-->北峰頂上
B下山:4時間2分(前回比△1分)
[内訳]北峰頂上(休憩等16分)--1時間3分-->行者小屋(休憩下山準備30分)--2時間13分-->美濃戸口

[詳細データ]
美濃戸口(-19℃)5:48--赤岳山荘(美濃戸)6:38/50--行者小屋9:05/10:10(朝食・準備等)--(文三郎道)--赤岳沢右ルンゼ下降点11:30/50(休憩・ロープを出す)--(南峰リッジ下〜右ルンゼトラバース・注1)--北峰リッジ取付12:12(F着)/20(L発)--2P目取付12:50/56--3P目取付13:18/22--中間の岩場(4P目相当・注2)--5P目取付14:04/09(注3)--上部岩稜取付(6P目取付)14:30/35--7P目取付15:01/05--(7〜9P目相当はコンテ)--赤岳北峰15:41/57--南峰16:00--右ルンゼ下降点16:25/35--行者小屋17:00/30(休憩・下山準備)--美濃戸18:49--美濃戸口(-6.5℃)19:43
【参考文献】
 日本のクラシックルート(山と渓谷社・1997年)
 アルパインクライミング(遠藤晴行編・山と渓谷社・2001年)
 チャレンジアルパインクライミング八ヶ岳・南アルプス・谷川岳編(廣川健太郎著・東京新聞出  版局2005年)
日本登山大系8八ヶ岳・奥秩父・中央アルプス(編集柏瀬祐之・岩崎元郎・小泉弘・白水社)
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