ウェストンの足跡を訪ねて
金峰山
(奥秩父・2595m)

2010年5月30日(廻り目平から)


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【はじめに】
金峰山は、日本百名山(深田久弥著)では「山容の秀麗高雅な点では秩父山群の王者」と評されており、山頂西端にある巨岩「五丈岩」によって中央道を走っていても容易に特定できる山です。

この山には、百名山ハントに夢中だった頃(
19949月)大弛峠から往復したことがあります。雲間に浮かぶ富士山を望むことができたしそれなりに楽しいハイキングだったのですが、シンボリックな「五丈岩」に登れなかったことがちょっと心残りでした。

W.ウェストンの足跡を調べているうちに、彼も1904年に登頂したこと知り(ルート等詳細不明)、その人となりからおそらく登ったであろう「五丈岩」に立ってみたくなりました。

そこで、今回のフリークライミングの練習の序にやり残した「宿題」に挑戦してみた次第です。

金峰山頂上(五丈岩より) 五丈岩(金峰山頂上より)

【山行記録】

5/30晴れのち曇り(夕方から雨)
1.廻り目平〜砂洗川中ノ沢出合

廻り目平は、天気予報がいまひとつだったこともあってクライミングシーズンの週末にしては空いていた(入門初心者ルートは相変わらず混雑)。
昨夜ずっと降り続いた冷たい雨も上がり朝から良い天気。ただ、1600m近い標高のせいで東京周辺と比べると気温は10度くらい低く、まだ3月上旬くらいの感じ(最低気温5度くらいで朝夕はフリースやダウンがありがたい)。
先週の「おがわやまだより(金峰山荘のHP)」にあった「金峰山登山にはピッケル・アイゼン携行」の注意書きが少し真実味を帯びてくる。とは言っても晴れると日中は暖かいので大いに迷ったが、金峰山はさらに1000m程高いことを考慮してやはり冬装備を持って行く事にする。五丈岩登攀の保険のクライミングギアと併せると結構な荷物、もたもた準備しているうちにフリークライマーより遅い出発となってしまった。

八幡沢手前の車止めゲートを過ぎ西股沢左岸沿いの林道を歩く。この辺りは入門初心者でも登れる岩場が多く見慣れた風景、対岸には一生無縁なマラ岩の岩搭が見える。

堰堤のある涸沢の出合(鋭い岩峰が覗いている)を過ぎると右手に20mほどの岩(フェニックスの大岩)が現れる。ちょっと急だがホールド・スタンスの多いフェースにはヘルメット姿の山岳会と思しき人たちで鈴なり状態だった。

小さな祠を過ぎた辺りから道端には石楠花のピンクの花が見られるようになり目を楽しませてくれる。

樹林が切れ時折川原のすぐ近くを通るようになる。ヨバリ沢出合を過ぎ、2段の堰堤が見えると道幅も狭くなり、歩行者しか通れない登山道となった。程なく小さな広場(砂洗川中ノ沢出合)に出て小休止、ここには八丁平との分岐を示す道標が立っていた。

(左)フェニックスの大岩               (中)砂洗川中ノ沢出合              (右)出合の丸木橋を渡り金峰山尾根コースへ
2.砂洗川中ノ沢出合〜金峰山小屋

金峰山(尾根コース)は、砂洗川を丸木橋で渡り、はじめは中ノ沢の沢身近くを歩いたり高巻いたりしながら登る。針葉樹が多いものの片側が開けた明るい道。

最後の水場を過ぎると次第に中ノ沢から離れ樹林に覆われた尾根道となる。標高表示や道標は多くよく整備されたハイキングコースという印象。途中石楠花の群生地があるがこちらはまだ咲く気配はなし。

薄暗い樹林の中の急登が続き湿度が高いせいか汗が噴出してきてちょっと不快。低温のおかげでアブ等が少ないのは助かる。金峰山小屋で使用する薪が積んである所があり、少々ペースダウンしてきたこともあって小休止とする。
水分補給と行動食で回復したところで行動再開、程なく傾斜が緩んで一時頭上が開ける。金峰山頂上が見えたが好展望というほどではなくカメラを出さなかった(このコースの往復では金峰山の唯一の撮影ポイントであったようだ)。
森林限界が近いのかと思ったがそうは問屋が卸さず再び樹林の中へ、いつの間にすっかり太陽が姿を隠し余計に暗く感じた。

下山してくる同年輩の男女二人とすれ違ったころから(2300m付近)残雪を見るようになるもののこの分では杖代わりのピッケルはともかくアイゼンの出番はなさそう。僅かな登りで森林限界を越えると金峰山小屋が現れた。

3.金峰山と五丈岩

小屋の上のベンチのある広場で再び休憩。ここは金峰山を撮るには近すぎるので、せめて五丈岩でもとカメラを出して待ってみるも頂上付近にはガスがかかり、ここでもまともな写真は撮れずじまい。

ハイマツと岩混じりの登山道(雪は全くなし)をひと登りで頂上に出る。天気は下り坂のようで頂上からはすぐ横の五丈岩以外ほとんど展望が得られなかった。
大岩を縫うようにして隣の五丈岩へ向かう。

五丈岩は巨岩を積み重ねたような大岩で鳥居のある基部から15mほどの高さがある。中間テラスまでは容易に歩いて上れ、前回もそこまでは登ったが、先の様子がいまひとつ分からず登れても下りられなかったら困るので断念した。

今回はクライミングギアを持参していることだし岩が湿っぽかったこともあって、念のため前回の中間テラスからロープで確保し中間支点も取って登った(正解だった)。

中間テラスから上は中央に位置する各段2m強3段の階段状の岩を登る。
一段一段の高さがないためクライミング経験が全くなくても腕力で何とかできるレベルではあるが、高度感があるため、私のような高所恐怖症の人がビレーもせず力任せに登るのは止めた方が無難だと感じた。

下段は容易な凹角登りで問題なし(U級くらい)。中段は見た目よりホールドが細かく、短いがプッシュホールドで立ち上がる箇所がV級+位のバランスクライミングとなる。1mくらいの高さに水平に走るクラックがありピトンを打って中間支点を取って登った。

最上段は僅か2m位とはいっても垂直なスラブ壁(壁面にホールドなし)、この登りはちょっとしたクライミングだった(W級?)。
まず、中段のレッジ(幅20cm)を右にトラバースして弱点の中央の岩と右の岩の間のコーナークラックまで移動(歩き)。
次に、ピトンで中間支点を取った上で、クラックと中央の岩の上にあるチッピングホールド(岩を削って作った人工的なホールド)を使って右の岩側面のスタンスに立ち込む。
右手がガバホールドに届くのでこれを両手で持って這い上ると登攀終了(マントリング)。

上にある板状の岩でセルフビレーを取り、妻を確保する。最上段の登りに少し戸惑っていたが2箇所あるチッピングホールドを上手く使いジャミングせずに登ってきた。

五丈岩の上は意外に広く小ピークの頂上のよう、基部にいる人がずいぶん小さく見える。これで天気が良ければ最高の気分だろう。

南端の一段高い岩に交互に立ち記念写真を撮る。
下りはセルフビレーを取った岩に捨てスリングを架け懸垂下降した。

4.下山

クライミングギアをしまって五丈岩を後にする。小屋の広場まで下りると先刻基部にいた二人(少し年長で富士見平から登ってきたとのこと)が休んでいた。席を譲ってもらい遅い昼食を摂る。少し寒いのでコーヒーでも沸かして飲みたいところだが、五丈岩で予想以上に時間を食ったのでそうもいかない。
空模様もますますあやしくなり追い立てられるようにるように下山にかかる。一時霰も降ってきたがすぐ止み、幸い廻り目平まで濡れずにすんだ。

(雑感)
・今回はウェストンも登ったであろう五丈岩に立てて素直に嬉しかった。見た目より手ごわかったが、その爽快感は予想以上だった。山に登る理由は人それぞれだと思うが、私の場合こういったシンプルな感覚を求めてなのかなとふと思った。

【山行データ】
5/30晴れのち曇り(夕方から雨)
廻り目平キャンプ場(幕営地)10:10-砂洗川中ノ沢出合11:09/12-最後の水場11:28 -金峰山小屋12:37/45-金峰山13:00/06-五丈岩基部13:10/35L(注)-五丈岩13:50L/14:20F(注)-五丈岩基部14:28F/45-金峰山小屋14:58/15:10-最後の水場15:50 ?-砂洗川中ノ沢出合16:05-廻り目平キャンプ場16:50

注:金峰山のシンボル「五丈岩」は金峰山の頂稜西端にあり基部から15m程ある大岩。
中間部までは容易に歩いて登れるが、上部は各段
2m強3段の階段状の岩場でクライミング風の登りとなる。各段の高さがなく登り自体は容易で注意すれば確保しないでも行けそうだが、テラス部分は幅20cm程度で高度感があり、見た目よりホールドが少なく、湿っていたのでロープを使用した(30mあればOK、ピトン2本使用、下りは懸垂下降)。
なお、コースタイムの
Lはリード、Fはフォローの略

【参考文献】
山と高原地図26金峰山・甲武信2009年版(昭文社)

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