小渋川から赤石岳(南アルプス南部)
その2
ウェストンの足跡を訪ねて

2010年8月6日〜8日
(前夜発幕営(荒川小屋・広河原)2泊3日)
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ちょっとバリエーション
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赤石岳3120m(小赤石岳より)
【山行記録(つづき)】
8/7(土)晴れのち曇り
3.赤石岳
荒川小屋6:30--(写真を撮りながら)--大聖寺平7:19--小赤石岳の肩7:59--小赤石岳8:15/18--赤石岳8:40/9:28
()荒川小屋〜大聖寺平
この山域は私たちも経験のある椹島からの周回縦走(荒川-赤石-聖)が多いせいか、皆、朝が早く3時過ぎには起きだしている様子。こちらは赤石岳に登って広河原まで下るだけだから(標準コースタイム6時間35分)もう一眠りする。
なお、今日広河原泊まりとしたのは(当初2日目の下山も考えていた)、昨日湯折〜広河原に5時間要したこと(逆コースでも標準時間は同じで長丁場になって疲労が心配)、小渋川の通過が夕立の虞もある午後になること(増水のリスク)を勘案してのこと。ただ、日曜まで天気は持ちそうという情報は得ていたものの、小渋川下りを3日目にすることは、天候急変の場合予備日がなく少々不安ではあった。
4時半過ぎにまた人の声で目が覚める。大分明るくなっており、トイレの行列がテント脇まで達していた。オレンジ色に染まった空にシルエットの富士がなかなか見事。カメラを手に慌てて飛び出すが上手く撮れなかった(一脚でもあれば・・・・)。
荒川小屋
テントに戻ると隣の2張は跡形もない。小屋の朝食が始まったらしく行列はいつの間に解消していた。朝食を済ませ撤収にかかる。今度は登山ツアーの人たちが(20人くらい?)テン場の空きスペースで準備体操を始める。

6時半に漸く出発、テント泊はもちろん小屋泊まりの人も既に出かけてしまい最後だった。
左画像:みんな出発して静かになった荒川小屋(背後は荒川岳)
チングルマの群落
大聖寺平まではカメラをぶら下げて歩く。荒川岳を背景にチングルマやキバナシャクナゲの群落を狙ってみるも山と花の向きの関係がいまひとつで苦労した。
後ろからは誰も来なかったが逆縦走の人と何人もすれ違う。トレイルランナーもいて走っているのに全く呼吸が乱れていないのには恐れ入った。
()大聖寺平〜赤石岳
大聖寺平から小赤石岳の肩までが今日の行程では一番の急登。だらだらした砂礫地歩きから(ダマシ平)、次第に急なジグザグ登りとなる。なるべく汗をかかないようペースを抑えて淡々と歩いた。少々お疲れの同年輩〜ちょっと年長のハイカー数パーティーをパスして肩に到着。
チシマギキョウ・タカネツメクサ・名称不明のオレンジの花等が咲いており、行く手にはソフトクリームの頭のような格好の小赤石岳、背後は荒川岳(前岳・中岳)とピラミダルな悪沢岳の展望がよかった。
肩からひと登りで小赤石岳。テン場で体操していた例の一団が休んでおり、ここは記録写真だけ撮って、少し下りたところで小休止とする。小赤石岳から続く東尾根の核心部(ラクダの背・冬道)の観察にはよい場所だった。
大聖寺平付近 ダマシ平〜小赤石岳の肩 肩から小赤石岳(背後は赤石岳)
小赤石尾根(東尾根) ミヤマダイコンソウ チシマギキョウ(背後は赤石岳)

赤石岳はなだらかな稜線歩き。色とりどりの花が咲いており下りの撮影ポイントを確認しながら歩くといつの間に頂上に着いてしまった。立派な道標の周りには学生パーティーのほか軽く10人以上の人が休んでいた。

()赤石岳(8:40〜9:28
ウェストンは、小渋の湯から10時間かけてこの頂に立ったものの(16時)、「私たちは霧は見たが眺めは見そこなった」と記している。
幸い私たちは天気に恵まれ、山頂からは360度の大展望だった。
南は巨大な三角テントのような形の聖岳(蝶ヶ岳から見る常念岳に似てる?)、その背後右に光岳、聖の左にはピラミダルな上河内岳と茶臼岳、いずれも懐かしい山だ。上河内・茶臼の間にはプチ富士といった感じの大根沢山、上河内の背後左には小無間山と大無間山と足を踏み入れたことのない深南部の山もよく見えた。

赤石岳より南ア南部の山々

東はなんと行っても富士山が大きくその右には気にはなっているものの未登頂の笊ヶ岳。
北に目を移すと小赤石岳の後ろに荒川岳(左)・悪沢岳(右)、その間には間ノ岳と農鳥岳(西農鳥・農鳥はまだ登っていない3000m峰、)、荒川岳の背後左に仙丈ケ岳、荒川前岳と中岳の間に塩見岳も覗いている。

赤石岳より荒川三山と南ア北部の山々

西南は大沢岳〜中盛丸山〜兎岳と聖岳へ続く稜線、西北は昨日歩いた小渋川の先に中央アルプスの山並みが見えた。大沢岳〜兎岳(小赤石岳肩より)

山岳展望を堪能した後は行動食で早い昼食(というよりブランチ)、ツアーの団体も加わって広い頂上は夏の槍ヶ岳のようになっていた。

()広河原へ

赤石岳928--東尾根分岐936/49(写真)--(写真を撮りながら)--小赤石岳1009--(写真・ライチョウ)--小赤石岳の肩1032--大聖寺平1058/110--船窪(1.5km地点)1138/40--4km地点1220--広河原小屋1312(幕営)

ゆっくり花を撮るつもりだったので団体の後から下り始めるも、途中で道を譲られ先に出る。追いつかれるまでの間に撮らなければならず慌しかったが、それも小赤石手前の分岐までだった(団体は赤石小屋へ向かう)。
小赤石岳を少し下りたところで一羽のライチョウに出会った。砂浴びに夢中でかなり近づいたのに全く意に介さない様子。ずいぶんシャッターを切ったが上手く撮れておらずがっかり。
大聖寺平への下りでは、千枚小屋を朝出発したと思しきパーティーと頻繁にすれ違った。真夏の日差しは厳しいし霞んできている。これから登る人がちょっと気の毒だった。
大聖寺平で小休止。新しい道標には赤石岳と荒川小屋の表示のみ、少し離れた所にある古い道標には広河原の方位も示してあったが文字は完全に消えていた。こちらへ下りる人は私たちだけ。
はじめの砂礫のトラバース〜ガレ場下りはやはり歩きにくい。右手に昨日は見えなかった荒川岳が大きいが、それも樹林帯に入るまでのわずかな間だけ、後は風通しの悪い尾根の下りとなる。
広河原へ下る 大聖寺平〜1km地点

船窪で呼吸整える。この先しばらくは苔むした岩が多くスリップしないよう少しペースを落として歩いた。
3.5km地点付近で無線連絡中の単独登山者とすれ違った(湯折を朝出てきたらしい)。
5km地点の先尾根から山腹へ下る所と、山腹のジグザグ下りの最後に浅い沢形へ下りる所(6km地点のすぐ手前(上))は倒木で分かりにくかった(特に後者)。
13時過ぎに広河原小屋に到着。

デポした荷物を回収しテン場探しに向かう。
それらしきところは、小屋裏手を少し進んだ樹林の中にあった。ただ、ごみ捨て場然としており(古い空き缶・瓶・ガラスの破片が散乱)とても設営する気にはなれない。小屋に泊まろうか迷ったが、湿っぽいし昨日すれ違った人の筆跡と思しき「ネズミが出る」のメモ書きが気になって、福川の河原に張ることにした。
なお、小屋にもエアリアマップにも「水場は流水」とあったが、水場の案内表示は福川の河原でなくなってしまい驚く。もっと上流か枝沢の水を引いてあるのかと思っていたが「流水」が福川の本流とは・・・。地形図やエアリアを広げこの水系に小屋の汚水が混入する虞がないことを確認して一安心(百間洞小屋は尾根の反対側の沢(百間洞)沿いにある)。

午後は洗濯したり河原遊びをしたりして過ごす。日差しは強いが、水は綺麗だし、意外に虫も少なく快適だった。

夕刻になって2人パーティーが登ってきた。やはり小渋川にてこずった様子だった。

8/8(日)曇り時々晴れ
4.下山

広河原小屋幕営地(福川河原)730--福川渡渉点742--キタ沢出合805--キタヤマ沢出合?840--(腰位の渡渉・ロープ使用)--高山沢出合925/27--(腰位の渡渉・ロープ使用)--榛沢出合1040/45--(河原歩き〜左岸の砂防工事道路)--七釜橋1112--(写真)--小渋湯跡1135--湯折登山口1150

()復路は中州歩きで少し時短(広河原〜高山沢出合)
尾根と違い沢は夜明けが遅いこともあるが小渋川の下りだけと思うとついつい寝坊してしまう。
朝から雲の多い天気だが何とか午前中は持ってもらいたいものだ。半乾きの衣類を着るのは気持ちが悪かったがどうせすぐ濡れるのだから我慢。
準備を整え730に漸く出発。小屋経由だと土手を登らなければならず、渡渉点まで福川の河原を下ってみるも、このゴーロ歩きは時間も労力も小屋経由と大差なかった。

福川を渡り、小渋川に入ってしばらくは草付きゴーロ歩き。キタ沢出合の手前で右岸へ渡り(股下・ここからロープ使用)、右岸側の流れの浅いところを渡り返して中州に入る。少し空が暗くなりパラパラと雨が落ちてくる(すぐ止んだ)。昨日下っておくべきだったか(ちょっと心配)。
中州は所々テープ・ケルンのある草付きのガレ・ザレ場歩き(踏跡あり)。左は切り立った岩場に沿って急な流れが見える(往路歩いたところ)。一昨日はずいぶん無駄なアルバイトをしたものだ。

        福川の川原に設営 キタ沢出合〜キタヤマ沢出合は中州を歩いた方が早い

キタヤマ沢出合の少し手前で左岸の川原へ渡ったが(踏跡がありテープが見えた)、出合からしばらくは中州があり、あまり意味がなかった。それは、往路では登ったスラブ状の岩場に行き当たってしまい、中洲へ戻って回避したからだ。
岩壁にぶら下がっていたトラロープにつられて左岸に渡ってしまったこともあった。先の淵は胸以上の水深があり、ここも渡り返した。トラロープは増水時の高巻き用なのかもしれない。

()渡渉の繰り返しがベスト?(高山沢出合〜)
高山沢出合を過ぎて間もなく左岸に現れた土手へ続く踏跡があった(テープあり・高巻道)。往路でも失敗したのに(別の場所)懲りずに登ってみるとやはり先が切れ急な崖となる。下りるのは大変でここも引き返した(10分くらいのタイムロス)。

その後は無駄な抵抗をやめ、概ね股下〜腰高の渡渉を繰り返しながら下る。一箇所淵を歩くところで(左岸)2〜3歩胸下となるところがあった(手前で右岸に渡れば回避可能)。

「半の木沢」表示がある沢の合流点(榛沢出合)に着きほっと一息、日差しも戻り少し暑い。
ロープを畳んで七釜橋へ。橋を渡り、林道脇に咲く花を撮りながら歩く。


復路は往路の経験を生かし何とか標準時間に近づけようと頑張ったが、それでも広河原〜湯折に4時間20分かかってしまった(+1時間20分)。ルートファインディングを含めた沢の経験・技術が根本的に不足しているのか、私たちにはとても3時間コースには思えなかった。
駐車場には一昨日の車に替わり新たに2台止っていた。

(雑感)
・全般的に天気に恵まれ、特に15年ぶりの赤石岳からは素晴らしい展望を堪能できた。
・小渋川は、沢超初心者の私たちにはなかなか厳しい「河原歩き」だった(標準時間を登りは2時間超、下りも1時間20分超)。沢でのルートファインディング・遡行技術・経験が根本的に不足しているものと思われる。過去の経験、例えば12年前の同時期に行った幌尻岳の額平川遡行と比較すると、こちらの方が大分難しいと感じた(渡渉点等の表示・入山者の少なさ、渡渉の困難さ危険度)。
ただ、このコースは上級(破線)ルートとはいえ一般ルート。おそらく、へつり・高巻き等「沢登り」まがいとなること自体がルートミスと思われる。本コースでは渡りやすい所の見極めが一番重要、余計なことをせず、渡渉を繰り返して安全な場所を確実に辿るのが(その目を養うことが必要だが)時間短縮につながるのではないかと思った。

10mロープ(9mmドライ)でちょうどよかったが、もっと水量が多い場合には少し長いものが必要かもしれない。また、水勢が思いのほか強く沢靴を履いてよかった。
・今回は30Lの防水袋を持参したおかげで、カメラ・寝具・衣類等を濡らさずにすんだ。防止袋はこのルートには必携。
・季節・天候等によって水深・水勢が大きく異なると予想され(難易度・危険度)。私たちのように沢に慣れてない人が予備日なし12日で計画するのは危険かもしれない。

【山で見かけた花】
一応撮った写真を図鑑と照合して名称がわかったもののみです。ただ花は疎いので間違っているかもしれません。
()湯折〜広河原小屋
   図鑑照合未了

() 大聖寺平〜荒川小屋
タカネマツムシソウキバナシャクナゲチングルマコイワカガミミヤマキンポウゲウサギギクヨツバシオガマハクサンフウロウラジロナナカマドミヤマシシウドイワオトギリ 

() 大聖寺平〜赤石岳
イワツメクサコバノコゴメクサタカネツメクサタカネヤハスハハコチシマギキョウハクサンイチゲミヤマダイコンソウミヤママンネングサ
*他に名称不明のオレンジ色の花(調査中)

【行程】前夜発2泊3日(幕営(荒川小屋・広河原小屋))
自宅(横浜)8/5(木)21:00頃=(第三京浜・環八 )=調布IC2200頃=(中央道)=駒ケ根SA8/6(金)0:054:50(仮眠等)=松川IC5:00=湯折登山口駐車場6:05/6:58(朝食・沢仕度)---(七釜橋---(小渋川)---広河原小屋---大聖寺平---荒川小屋(幕営)8/7(土)---大聖寺平---赤石岳---大聖寺平---広河原小屋(幕営)8/8(日)---(小渋川)---七釜橋---湯折登山口11:50/1215?:山行データ参照)=松川IC13:15=(中央道・渋滞)=八王子IC1750=(R16・R246)=帰宅 19:45

【山行データ】

8/6(金)晴れのち曇り
湯折登山口658--小渋湯跡710--七釜橋725--(左岸の砂防工事道路〜河原歩き)--榛沢出合755/800--(腰位の渡渉・ロープ使用注1--高山沢出合925--(腰位の渡渉・ロープ使用(注1))--キタヤマ沢出合--(腰位の渡渉・ロープ使用(注2))--キタ沢出合1115--(注3--福川渡渉点1152--広河原小屋1207/45--5km地点(注41322--4km地点1347/52--標高2000m地点1404--3km地点1418/22--2km地点1442--トラロープのある岩場--船窪(1.5km地点)1502/08--森林限界--1km地点1529--0.5km地点1547/52--(ガレ場)--大聖寺平1609--(写真)--荒川小屋1647(幕営)
1:榛沢出合〜キタヤマ沢出合は廊下状(両岸とも切り立った岩壁)となっており、川原のある方への渡渉を繰り返す。
2:キタヤマ沢出合付近より上流部は左岸寄りと右岸寄りに合計2〜3本の流れがあり、通常はその中州を歩くようだ(踏跡・テープ・ケルン等あり)。復路では当該ルートを通ったが、往路はそのまま左岸の流れに沿いに遡行し、30分くらいタイムロスをしてしまった。こちらはちょっとした難所がありへつり(又は高巻き)が必要。
3:地形図にはまだ表示のある昔の高巻き道(高山沢出合〜広河原小屋)に引き込まれてしまった。これは寸断されたもので、増水等やむを得ない場合以外利用価値はなし。登った箇所には百間洞までの所要時間が記された道標が落ちていたが(かつては広河原小屋から福川沿いを百間洞へ登る登山道があった(廃道))すぐに先は切れ落ちて通行できなくなった。結局河原へ引き返すはめになりここでもタイムロス。
注4:広河原小屋からは大聖寺平までの距離を示す金属プレート(0.5km毎)が設置してある。大聖寺平は6.5km地点。
8/7(土)晴れのち曇り
荒川小屋630--(写真を撮りながら)--大聖寺平719--小赤石岳の肩759--小赤石岳815/18--赤石岳8:40/9:28(大休止)--東尾根分岐936/49(写真)--(写真)--小赤石岳1009--(写真・ライチョウ)--小赤石岳の肩1032--大聖寺平1058/110--1km地点1125--船窪(1.5km地点)1138/40--トラロープのある岩場1144--2.5km地点1156--3km地点1202--4km地点1220--5km地点1240--6km地点1303--広河原小屋1312(幕営)

8/8(日)曇り時々晴れ
広河原小屋幕営地(福川河原)730--福川渡渉点742--キタ沢出合805--キタヤマ沢出合840--(腰位の渡渉・ロープ使用)--高山沢出合925/27--(腰位の渡渉・ロープ使用)--榛沢出合1040/45--(河原歩き〜左岸の砂防工事道路)--七釜橋1112--(写真)--小渋湯跡1135--湯折登山口1150

【参考文献】
日本アルプス登山と探検(W.ウェストン著・岡村精一訳・平凡社ライブラリー)

山と高原地図42塩見・赤石・聖岳(昭文社・2010年版)
日本登山大系9南アルプス(柏瀬祐之・岩崎元郎・小泉弘編・白水社・2002)
高山植物ガイドブック(鈴木庸夫・長塚洋二共著・永岡書店)

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